【ご挨拶】
日本災害医療薬剤師学会は、2006年の設立以来、災害時に薬剤師が果たすべき役割を探究し、災害薬事・災害薬学に関する教育・研究・実践を積み重ねてまいりました。その歩みは、薬剤師だけで完結するものではありません。医師、看護師をはじめとする医療職、行政、保健・福祉関係者、物流・流通関係者、企業、そして地域住民など、多様な組織・職種との連携を通じて、災害時に必要とされる薬事支援のあり方を発展させてきた歴史でもあります。
今回、第14回日本災害医療薬剤師学会・学術大会を山口の地で開催することとなりました。
山口県は、企業誘致において「自然災害の比較的少ない地域」であることが利点の一つとして紹介されるほど、これまで大規模な自然災害の経験が比較的少ない地域です。しかし、近年の地震、豪雨、台風、洪水などを振り返れば、もはや「これまで大丈夫だったから、これからも大丈夫」と考えることはできません。災害は場所を選ばず、また、その姿も変化しています。
災害が少ない地域だからこそ、災害が起こる前に考え、備え、訓練する。
この視点は、今後の地域防災・災害医療を考えるうえで、極めて重要ではないでしょうか。
本大会では、災害時における薬剤師の「ロジスティクス力」を主要なテーマとして取り上げます。ロジスティクスという言葉からは、医薬品や物資の輸送・供給がまず想起されます。しかし、災害医療におけるロジスティクスは、単なる「物を運ぶこと」ではありません。
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何が起きているのかを把握する。
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何が、どこで、どれだけ必要になるのかを予測する。
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限られた人員・物資・情報を適切に配分する。
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そして、状況の変化に応じて支援を組み替える。
こうした一連の判断と行動こそが、災害時のロジスティクスの本質であると考えます。
薬剤師には、医薬品の安定供給や調剤・服薬支援だけでなく、医薬品需要の予測、代替薬の選択、OTC医薬品の活用、薬学的トリアージ、避難所における環境衛生、公衆衛生への対応など、薬学的専門性を基盤とした幅広い役割が求められます。
そして、その目的は極めて明確です。
被災した方々に、災害だからという理由だけで、必要以上の「我慢」を強いることのない支援を実現することです。
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医薬品がない。
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必要な治療が継続できない。
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衛生環境が悪化している。
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情報が届かない。
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支援が必要な人に、必要なものが届かない。
こうした状況を一つでも減らしていくことが、私たち災害医療に携わる薬剤師の使命の一つであると考えています。
そのため本大会では、特に次の視点(予定)から議論を深めたいと考えています。
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人道支援の原点
被災者に「我慢をさせない」ための支援とは何か。 -
データ駆動型の災害支援
刻々と変化する情報を収集・分析し、医薬品や医療ニーズをどのように予測し、次の支援につなげるのか。 -
地域特性を生かした支援体制
中国・四国地方の薬剤師による支援体制、さらに山口県に集積する製薬関連企業等との連携を、災害時の医薬品供給にどのように生かすことができるのか。 -
薬剤師だからこそできる支援
薬学的トリアージやOTC医薬品の活用を通じ、限られた医療資源の中でどのように被災者の健康を支えるのか。 -
熊本地震―過去・現在そして未来へ向けて
2つの巨大地震を通して、私たちは何を学び、何を改善できたのか。そして、なお解決できていない課題は何か。
災害対応に「完成形」はありません。過去の災害で得られた知見を次の災害へつなぎ、さらに新しい技術やデータ、地域資源、そして多職種・多組織の力を組み合わせながら、より良い支援へと更新し続ける必要があります。
本大会が、これまで蓄積されてきた経験と知見を共有するだけの場ではなく、**「次の災害に、私たちは何を準備するのか」**を参加者一人ひとりが考え、語り合い、新たな行動へつなげる場となることを願っています。
研究者、教育者、病院・薬局薬剤師、行政関係者、企業、災害医療に携わる多職種の皆様、そしてこれから災害医療を学ぼうとする学生の皆様まで、さまざまな立場の方々に山口へお集まりいただき、活発な議論と交流が生まれることを期待しております。
山口の地から、次の災害医療・災害薬事の姿をともに考えてまいりましょう。
皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。
なお、大会会場は宿泊・交通の便がとても悪い地です。是非、皆様の「ロジスティクス力」を発揮してご参加ください。
2026年8月吉日
第14回日本災害医療薬剤師学会・学術大会
大会長/実行委員長 惠谷 誠司
(山口東京理科大学薬学部)